第13回(最終回):6輪生活の愉しみ
後輪駆動の2シーターに拘って... by 岩館耕一
最終回は番外編です。クルマ好きにあっては、同時に自転車も愛でる、という向きが少なからず見受けられます。わたくしの自転車趣味も運転免許を取得する遥か以前からのもので、 実は免許を取ってクルマを持つ様になったら是非とも実現させたかった、「悲願」とも申すべき夢を温めていました。
昔まだまだサイクリングがメジャーな趣味として認知されてはいなかった頃、赤坂の自転車振興会にて自転車ロードレースの世界最高峰、“ツール・ド・フランス”の記録映画上映会が催されました。そこで初めて目にする、プジョー504やシトロエンのブレーク、アルファロメオ・セイ等、ボディサイドへスポンサー名がハデに横書きされた各チームのサポートカーの、動く映像。それらのルーフキャリアへ、倒立させた状態で前後互い違いに積まれた数台のロードレーサーの、どハデなアピアランス、それは目に沁みました。あのアデ姿に憧れ、マイカー手に入れた日には必ずやアレをヤルぞ!と目論んでおりましたですよ。
時は流れて、くたびれた中古ながら初めてのマイカーのキーを手にする日も訪れ。愈々「アレをヤル」にあたり、ルーフキャリアはやっぱり“ツール”のサポートカーと「おソロ」だよな、と用品店を物色しておったのですが、そんな折り。クルマには目利きの知人が「このクルマ、一度ひっくり返って屋根潰しているね。」...なんてこったい!エアコンのブロア“強”にすると吹出し口から強化ガラスの破片が出てくるとは思っていたが...! (その時点で気付くぜ普通)ルーフ強度の不安により「夢」は一挙に「夢のまた夢」へと遠ざかりました。
そうこうしておるうちに、研修で地方の仮住まいと東京とを往復する生活になりまして。毎回の移動にはもう1台の愛車、イタリー製ロードレーサーもお供させる様になりました。屋根積みは諦めたのでホィールを抜いて後部座席に収めての積載でしたが、これが誠に具合好い収まりよう。幾らカッコいいアピアランスでも運転している自分にゃ見えないや、とここでもアウフヘーベン。そうなると“愛車”を駐車中の盗難や雨天走行、高速道長時間走行による汚れからプロテクトするのにはコッチの方がいいや、となってきます。若き日の、ヒリつく様なあの憧れどこへやら。
その後、代が替わるごとに、マイカー車内への積載方法工夫しながら按配良く車載してきたのですが。先代車に限り、ロードレーサーはバラバラに分解しても積込み様が無いほど積載スペースがありません。トランクに至ってはホィール1本収まりませんでした。前後方向の寸法がホィール径を下回っています。そのクルマ導入にあたっては、それまでとは使い方の優先順位を変えたので、それも承服の上での事ではありましたが。
それでもやはり、クルマで出掛けた先にてアシを自転車に代えて動き回りたい機会は少なからずあります。普段乗りの、車輪径14インチの折畳みミニサイクル、トランク収納試みましたが僅差で入りきらない。ここで久しく封印していた“趣味自転車すきすきモード”再起動して、折り畳み姿が超コンパクトになる次号機サーチを開始しました。結果。
ピンポイントでヒットしたのが写真の、これ。HANDYBIKE:独 IKO社がデザインしてTAIWAN製造、本邦ではブリジストンサイクルが独占販売してました。購入検討の時点では既にモデルチェンジしており、在庫整理だったのか、オプションのキャリーバッグ付で定価の半額ほどだったのが衝動買いを後押ししました。
アルミフレームで軽量、折り畳みには工具不要で1分と掛かりません。通常この手の「色物サイクル」に見受けられる、細部の仕上げのアバウトさ が無く、可動部のジョイント、精密な折り畳み機構など、ことのほか手の掛かった各部の造形がウルサガタをも納得させるフィニッシュ。タイヤは6インチで、ゴム無垢ではなく、ちゃんと空気入り。専用に無垢アルミから削り出されたハブ一体のホィールが白眉です。鉄製のフロントフォークだけがアンバランスにチープかな。
で。乗ってみました。諸兄のご賢察にたがわず、歩くよりは僅かに速く、歩くより遥かに疲れます。モデルチェンジではブリジストンがこれを元に車輪を8インチへインチアップした上、各部の見直しがなされた自社製造品にスイッチした様ですが、ここでその理由が判った次第。HANDYBIKE 6インチ、「使えねぇ自転車」でしたが、面白いから、許す。
その後購入金額を上回る資金を投入して改造施し、幾らか乗りアジ民主的になりました。
不思議な事にこれ導入後、一度も車載してみる事無く車両を968へ入れ替えてしまいます。なんだかこんなのばっかしね。後日、知人の乗る先代同型車で初めてトランク収納試させて貰いました。笑うほど楽勝。あの、何も入らなかったトランクに。改めて、これがこの自転車の存在価値の総てに思われました。実存主義哲学的ではあります。
再三ご案内してきました通り、968のラッゲージスペースは十分以上のもの。ロードレーサーもホィール抜いただけで楽勝です。HANDYBIKEになると畳まずにも収まってしまいます。梅雨が明けたらまた、うつけた6輪生活に明け暮れたいですね。ご通読感謝します。佳きカーライフを。
text by 岩館耕一 | 2006.06.30 | [ 後輪駆動の2シーターに拘って... ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


















